寺社の楽しみ方のひとつが四季折々の変化が楽しめる美しいお庭です。自然の景観や石などを使ってさまざまに表現されるお庭は、とても奥の深い世界です。今回は、“庭園ってよくわからない”、そんな人のために、お庭を楽しむための基本をお伝えします。
■庭園の様式
日本庭園は、大きく分けると「池庭」、「枯山水」、「露地」の3種類。まずは、この様式の違いからご紹介します。
(1)池庭
池を中心とした庭園で、池泉(ちせん)庭園とも呼ばれます。古くから日本庭園に多くみられる形式で、日本の夏の暑さを和らげる働きもあります。
(2)枯山水
山や海、川、滝などの自然の風景を石や砂、植栽で表現した庭園。
室町時代以降に成立したと言われていて、お庭の表現に大きな変化を生みました。
(3)露地
茶室へ至るまでの庭園のことを言います。通路としての役割もあり、「伝いの庭」や「茶庭」とも呼ばれます。桃山時代に生まれた様式です。
鑑賞の方式
次に、庭園の鑑賞方法の違いによっても分けられています。「池泉鑑賞式庭園」など、庭園の種類とあわせて細分されます。
・鑑賞式
庭には下りずに、座敷に座って眺めて観賞する方法。
・回遊式
庭の中を順路を定めて歩きながら観賞する方法。
・舟遊式(しゅうゆうしき)
庭に設けた広大な池の中を舟遊びをしながら観賞する方法。
■庭園の4大要素
そして最後に、日本庭園に欠かすことができない4つの要素をご紹介します。
(1)水
生命の源であり、穢れを清めるとされる「水」。枯山水のように、実際に水を流さない場合でも水の波紋や流れが表現されていて、要素としては取り入れられています。
(2)石
自然の万物に神様が宿るとされると信仰がある日本古来の信仰。仏教においても、石ひとつを仏様に見立てたり、いくつかの石の組み合わせで仏様を表していたり、重要な役割を担う要素です。
(3)植栽
日本庭園らしさを演出する植物である「松」。永遠や不変を象徴し、多くの庭園で松が植栽の主役となっています。他には、ツツジやサツキなど色彩を加える植物もあります。
(4)景物
石灯籠や飛び石、蹲踞(つくばい)、竹垣など、いわゆる空間を演出するためのアイテムです。
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いかがでしょうか。日本庭園は、「水」「石」「植栽」「景物」の4つの要素により、さまざまな様式の庭園がつくられ、そして、一番お庭が美しく見える鑑賞方法で楽しむ、そんな世界なのです。基本となるこれらを押さえれば、庭園鑑賞をもっと楽しんでいただけるのではないでしょうか。宿坊に宿泊する際や、参拝の際には思い出してみてくださいね。