■寺社と縁のない人をひきつける宿坊の魅力
私が初めて宿坊に泊まったのは、16年前の大学時代。ガイドブックの片隅に書かれていた「お寺に泊まれる」という一文に興味をそそられ、〝古都愛好会〟というサークルの仲間とともに、京都の妙心寺塔頭(たっちゅう)・大心院に宿泊した。宿坊についての知識は全くなかった当時の私の予想と反して、とても快適な旅だった。こたつが用意された暖かな部屋。外には美しい枯山水の庭園や重要文化財に指定されている妙心寺の伽藍(がらん)が並んでいた。夜には月明かりに照らされたお堂が美しく、昼だけではなく24時間観光できることにも宿坊の魅力を感じた。宿坊には日本各地の宿とは一線を画す贅沢(ぜいたく)な風情があり、これはすごい場所を発見してしまったと、胸が高鳴ったのを覚えている。初めての宿坊旅行から帰った後、宿坊情報を夢中になって探し、「宿坊研究会」という名のサイトをたちあげ、2000年5月5日にインターネットで公開を始めた。
■国内からだけでなく海外からも宿坊の人気が高まっている
お寺や神社の日常に触れる体験に注目が集まることは、寺社にとっても意外だったのかもしれない。発信した情報を見た多くの方が宿坊へと足を運び、座禅や写経ができるか、精進料理を食べられるかなどの問い合わせが寄せられ、大きな反響を得た。 そして近年、お寺や神社での素晴らしい宿泊体験を求め、国内だけでなく海外からも宿坊の人気が高まっている。座禅や写経などの仏教体験。木造建築のぬくもりや日本庭園に漂うわびさび。祈りに満ちた本堂。掃き清められた境内のすがすがしさ。ホテルでも旅館でも味わえない非日常と出会う宿。そこでは朝のお勤めやお坊さん・神主さんの所作など、寺社の「日常」に感銘を受ける方も多い。参加者が1000人を超える寺社旅サークル「宿坊散策会」や各地の宿坊運営者が集まった「宿坊サミット」、寺社好きな男女が集まり寺社体験を楽しみながら出会いの場にする「寺社コン」など、宿坊研究会を媒体にしたさまざまなコミュニティも広がりを見せている。
なぜ、こんなにも寺社に注目が集まっているのか。時代の閉塞(へいそく)感から、癒やしを求める気流になっているというが、私にはそれだけではないように感じられる。宿坊に泊まられる方は、意外とのびのびとしている。お坊さんや神主さんに人生相談をされる方もいるが、そう多くはいない。時間の使い方が単純に変わってきている。人々は積極的に物より時間に価値を置くようになってきた。罰ゲームのようなイメージのあった座禅や写経は、一度は体験したい自分を高める体験として語られるようになった。
その中で私はこれからの新しい寺社のモデルには、宿坊が加わると考えている。例えばお寺を経済基盤で考えた時、檀家寺・信者寺・観光寺で分けられることがあるが、今後はこれに宿坊寺も入っていくと予想している。現在、日本にはお寺・神社合わせて宿坊が500軒ほどあるが、大半は和歌山の高野山や長野の善光寺、戸隠、山形の出羽三山など、一つの地域に固まっている。宿坊が一つもない県も多く、それだけに一軒生まれるだけでも世間に与えるインパクトは大きい。過疎の町にあるお寺の宿坊に、全国から人が集まるケースも出てきている。日常とは別の価値観に出合う場所として。寺社の新しい存続形態として。都市と地域をつなぐ拠点として。都市と地域をつなぐ拠点として。海外からの旅行者を受け入れる日本の顔として。これからますます宿坊の可能性は広がっていく。そして私は現在すでにある宿坊を盛り上げていくことはもちろん、新たに宿坊を開きたい寺社があれば、そのお手伝いもできたらと考えている。今後は宿坊を中心にしながら、日々の活動や寺社を盛り上げる方策について述べていきたい。
■宿坊創生プロジェクトが始動!宿坊新規開設・運営に関するご相談お待ちしております!
日本の伝統文化に触れ、朝のお勤めなど寺社ならではの体験ができるとして外国人観光客を中心に注目が集まる「宿坊」。宿泊施設不足解消や一部地域に集中する観光客の分散化などを意図し、「宿坊創生プロジェクト」が始動!開設までの企画立案、各種手続き、開設後の集客プロモーションまで全国寺社観光協会のコンサルタントがサポートします!まずはお気軽にお問い合わせください。
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