<宿坊研究会レポート05>宿坊を開くための7つのリスク軽減策

お寺や神社が宿泊施設を開く。こうした話を聞くと、突拍子もないことに思えるかもしれません。実際に私は檀家さんや氏子さんが減り、将来展望に悲観的なお坊さんや神主さんに宿坊開設を提案してきましたが、多くの方の反応は「アイディアとしては面白いけど、実際に行うのは難しい」という苦笑いでした。
もちろん、全面的に宿泊施設を整え、ある日から突然旅館としてフル稼働させようと思えば、これはとても大変です。前号では宿坊開設の3つのハードルとして「初期費用」「営業許可取得」「技術・ノウハウの習得」を挙げましたが、壁を出来る限り低くすることも宿坊創生プロジェクトでは重要課題です。そこでここでは開設ハードルを下げるためのアイディアを列挙して紹介します。

■宿坊を開くための7つのリスク軽減策

(1)身内の宿泊

不特定多数の相手ではなく、知り合いのみを受け入れる方法です。これはすでに日常的に行われている寺社も多いでしょうが、そこに「将来の宿坊化のための足掛かり」という意識を付け加えることで、見え方は全く変わります。

(2)宿泊を伴う修行体験等の開催

定常的に宿泊者を受け入れる「宿」としてではなく、イベントとして宿泊者を受け入れます。単発であれば設備投資を行わず、あるものを活用するだけで開催可能です。また、それによって設備や備品など必要なものの見極めや、運営ノウハウを学ぶこともできます。

(3)ミニマム宿坊

お寺や神社であまり使われていない部屋を、一部屋のみ宿泊施設として運用します。また週3日のみ、祈祷や法事の入らない平日のみ、お盆やお彼岸は休止など、時期を限定することもひとつの方法です。

(4)素泊まり営業

宿泊業を行うに当たり、大きな問題となってくるのは料理です。調理技術は一朝一夕では身に付きませんし、飲食店営業の許可は旅館業と別に必要になります。そこでこれらを省いて素泊まりのみとすることで、開業への垣根を下げることができます。

(5)ホームステイの受け入れ

海外からの留学生など、ホームステイの受け入れ先として寺社が名乗り出ることも有効です。日本文化を知ってもらうという名目も付きますし、旅館業の営業許可も不要です。

(6)宿泊と宗教部門の切り分け

少し規模が大きな寺社には、旅館運営を手掛ける企業で宿坊に興味を持つところもあります。

(7)周辺旅館との提携

どうしても宿泊施設を作ることが難しい場合、周辺のホテルや旅館と提携することも一案です。宿泊者に朝のお勤めや修行体験を提供することで実施します。ただしこの場合は主体が外部になるため、寺社が何を目指して手を結ぶのか、具体的な設計図を描いておくことが重要です。

宿坊を開設することは多くの寺社にとって未知の領域です。そこでまずは小さく、小さく、宿坊を開いてみる。そこで得た経験をもとに、階段を登るように宿坊を整えていく。常に前に進む意識と撤退の道筋を残しておくことで、宿坊開設へのリスクは最小化することができます。

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